大野厚嗣 Digital Gallery

2020/5/3



当ホームページを立ち上げて10年が経ちました。
なんとなく作ってみたページをネットに上げたのがきっかけで少しずつ更新を重ねてきました。
実生活とは異なる自分の一部を好きなように載せ、自身も楽しみながら僅かな訪問者の方々を少しでも愉しませることができたらという思いで続けてきました。
例えるならここは、大通りから外れた路地裏にある小さな店。そこに価値を見出す人がいるのは知っていますし、自分もそんな一人です。
10年という節目に合わせ、自分の絵を描く事に対する考えを最近の所感を交えて綴りたいと思います。


実際は会社員をしながら絵を描き続け17年になります。
高校卒業後、就職し社会人となりましたが、本当は絵を勉強したかった。でも当時の経済的にもそれは不可能で、自分自身そこまで本気ではなかったと思います。
数年経った2007年の暮れ、昔自分に絵の基礎を教えてくれたT先生の個展開催を偶然知り、会いに行きました。そこで近況の相談し、こう言われました。
「君は働きながら絵を描くと良い」
理由は様々ありますが、簡潔に言えば「絵で食う道は楽ではない」という事。これは昔から言われていたし、先生の体験談も交え話してくださったので納得しました。それともう一つ
「精神状態は作品に影響する」
稀に精神的に追い込まれた方が良い絵が描けるというストイックな画家も居ますが、そうした画家は作品に加え生き様を魅せるという方向に近く、自分は卓越した技術に憧れを持つタイプの為、追い込むタイプに当てはまりません。
生業として絵を描き続ける事は困難で尊敬に値するくらいですが、それが全てではない。十人十色の制作スタイルがあると思います。
あれから12年以上が経ち、あの時のT先生の優しさにより、今でも自分は絵を描き続けられていると言っても過言ではありません。




昨年初頭に綴った「あらゆる物事が有限である」
この言葉がこんなにも早く実感するとは思っていませんでした。
年が明けわずか3ヶ月で日々の生活が制限されるこの現状を誰が予想したでしょうか。
改元で沸いた1年前とは真逆、愛でられる事の無い桜は静かに散り、浮足立つはずの休日の街は閑散とし、目に付くのはウイルス感染者数の更新。目に見えない恐怖を抱きながら過ごす日々は誰にとっても良いものではありません。目に見えない恐怖とは厄介なもので、人を疑わなければいけない状況ができてしまうのが最たる点だと思います。これにより生まれる差別や風評が時には実害にまでつながります。各々が予防(自衛)すれば全体的被害は少なく、他人を疑う必要もないというのが自分の考えですが、世の中そう単純にはいかないようです。
こうした国難の際に強まる政治批判ですが、誰もが納得いく対策を的確に打ち出す難しさも理解し、迷走や泥沼は避けてほしいものです。私生活に置き換えても、自分と対立する考えを持つ人も大勢いるという点から「皆が納得」というのは不可能と割り切り、押し通す事も必要だと思います。

自粛生活で一変し、これまでの価値観や考え方を改めなければいけない大きな転換期である事は多くの人が気付いてると思いますが、こんな時だからこそ昨年初頭にも綴った「情報の取捨選択」が必要だと思っています。
世界中の人々が「自分には何ができるか」と考え行動しているという報道も目に入りますが、そこまで大きく捉える必要はなく「自分達の生活をどう守るか」という考えの方がより身近で当てはまると思います。”守る”という時点で犠牲を伴う事もあるけれど、状況を考えれば仕方のない事です。

自分自身「いつか絵で稼ぎたい」という気持ちはかなり前に捨てています。
誰かの為にではなく自分の為に絵を描いている、そう考えれば自ずと技術の向上に目を向けられると思ったからです。これから様々な物事が淘汰されていく中で、自分の作品や考え方に価値を見出してくれるのなら、それ以上有難い事はありません。

東日本大震災後の自粛や電力不足により生活が一変し、多くの人が不安を抱いていた当時の事は今でも覚えています。震災以降、大きく変わったのは津波や節電に対する意識だと思います。
緊急事態宣言が解除され、これまで通りの日常が戻るまでの時間がどれほどかは分かりませんが、今後は感染症に対する意識を変えなければいけないと個人的に思っています。


昨年秋の台風による豪雨は記憶に新しく、「命を守る行動を」というそれまで聞き慣れないフレーズも何度聞いたか分からないほどでした。災害はいつどこででも起こりうる事ではありますが、昨年の豪雨は特に美術に関わる人へ課題を提起したといってもおかしくないくらい、美術館や博物館への水害が目立ったように思います。個人のコレクターも例外ではありません。
数年前から、海外の美術館や博物館(大英博物館・オルセー美術館・メトロポリタン美術館・・等)ではネット上で収蔵品を公開しており、訪れられない人へはもちろん、肉眼よりも詳細に観れるという利点があります。自分が思う利点としては、作品のデータによる保存という点です。
今の時代ではあまり聞かないかもしれませんが、昔の作品を辿ると「焼失」と明記されてるのみで、写真の無い時代では詳細不明な事もあります。
今後の災害に備え、作品をデータとして近年開発が進んでいるブロックチェーン上に残しておく必要もあるのではないかと思っています。



「歴史は繰り返す」といいますが、遡れば昔から感染症で苦しみ克服し、今があります。
今の状態がいつまでも続くとは考え難く、回復できないほど皆そこまで弱いとも思えません。
短期間で簡単に生活が一変してしまう現状に戸惑う気持ちもありますが、これは大きな転換期と考え、有限の時間の使い方を改めて考える良い機会、と捉える方が良い道へ進むと思います。






2020年5月3日